資格勉強は「覚える」より「思い出せる形にする」ことが大切
資格勉強をしていると、「参考書を読んだのに思い出せない」「昨日覚えた用語を忘れている」「問題文を見た瞬間に頭が真っ白になる」ということがあります。特に大人になってからの勉強では、仕事や家事で疲れていたり、まとまった時間が取れなかったりするため、学生時代のように暗記できないと感じる人も多いと思います。しかし、覚えられない原因は、記憶力だけではありません。多くの場合、知識を頭の中に入れるだけで、必要なときに取り出す工夫が足りていないのです。資格試験では、参考書の文章をそのまま覚えるより、問題を見たときに「これはあの用語だ」「この制度はあの分野だ」と思い出せることが大切です。この記事では、資格勉強で使いやすい記憶術を、できるだけ実用的に紹介します。
暗記と記憶術は少し違う
暗記というと、何度も読む、何度も書く、赤シートで隠す、単語カードを見る、といった方法を思い浮かべる人が多いと思います。もちろん、これらも大切です。ただし、単純に繰り返すだけでは、覚える量が多くなるほどつらくなります。一方、記憶術は、覚えたい内容を思い出しやすい形に変える方法です。たとえば、難しい用語をイメージに変える、順番を場所に置く、似た用語を比較する、頭文字でまとめる、物語にしてつなげる、といった工夫です。資格勉強では、丸暗記だけに頼るより、暗記と記憶術を組み合わせる方が続けやすくなります。記憶術は特別な才能ではなく、「思い出すための補助道具」と考えると使いやすいです。
まずは試験範囲を「地図」として覚える
資格勉強でいきなり細かい用語を覚えようとすると、頭の中が混乱します。たとえば、FPなら年金、保険、税金、不動産、相続などが出てきます。ITパスポートなら、経営、マネジメント、ネットワーク、セキュリティ、データベースなどが出てきます。簿記なら、仕訳、勘定科目、試算表、決算、財務諸表などが出てきます。最初に必要なのは、細かい暗記ではなく「この資格には、どんな分野があるのか」という地図です。試験範囲を大きな箱に分けておくと、新しい用語が出てきたときに「これは税金の話だ」「これはセキュリティの話だ」と整理しやすくなります。覚えられない人ほど、最初に全体像を作ることが大切です。
記憶の部屋で試験範囲を整理する
記憶の部屋とは、自分がよく知っている場所に、覚えたい内容を置いていく記憶術です。自宅、通勤路、昔の学校、よく行く店など、頭の中で思い浮かべやすい場所を使います。たとえば自宅を使うなら、玄関、廊下、洗面所、キッチン、リビング、寝室という順番を決めます。そこに試験範囲を置いていきます。FPなら、玄関にライフプラン表、廊下に保険証券、洗面所に投資信託の箱、キッチンに税金のレシート、リビングに不動産の模型、寝室に遺言書を置くようにイメージします。これだけで、FPの大きな分野を順番に思い出しやすくなります。ITパスポートなら、玄関に会社の経営戦略、廊下にプロジェクト管理表、洗面所にネットワークの配線、キッチンにデータベースの引き出し、リビングにセキュリティの門番を置くようにします。細かい用語を全部置く必要はありません。まずは大きな分類を部屋に配置するだけでも、試験範囲の全体像がつかみやすくなります。
イメージ変換法で難しい用語を覚える
資格勉強では、普段使わない言葉がたくさん出てきます。文字だけで覚えようとすると、どうしても頭に残りにくいです。そこで使えるのがイメージ変換法です。これは、覚えたい用語を絵や場面として頭の中に変える方法です。たとえば、ITパスポートの「クラウド」は、雲の上にデータの箱が置かれている場面にします。「ファイアウォール」は、炎の壁が怪しいウイルスを止めている場面にします。「暗号化」は、文字が鍵付きの箱に入れられている場面にします。FPなら、「保険」は大きな傘が家族を守っている場面、「相続税」は遺産の箱に税金の札が貼られている場面、「年金」は老後に毎月届く封筒の場面にできます。簿記なら、「資産」は自分が持っている道具箱、「負債」は返さなければならない借用書、「仕訳」はお金を左右の箱に分けている場面として覚えられます。少し変なイメージほど記憶に残りやすいので、きれいに考えすぎなくて大丈夫です。
ペグ法でリストや順番を覚える
ペグ法は、あらかじめ数字にイメージを決めておき、覚えたい内容をそこに引っかける方法です。たとえば、1はペン、2はニワトリ、3は三輪車、4はヨット、5はゴリラ、というように自分だけの数字イメージを作ります。そして覚えたい用語と組み合わせます。ITパスポートで「クラウド、暗号化、ファイアウォール、データベース、AI」を覚えるなら、1のペンが雲に刺さっているのでクラウド、2のニワトリが暗号文を読んでいるので暗号化、3の三輪車が炎の壁を走っているのでファイアウォール、4のヨットに大量の引き出しが積まれているのでデータベース、5のゴリラがAIロボットと会話しているのでAI、というようにします。ペグ法は、10個前後のリストや順番を覚えるときに向いています。試験直前に苦手項目をまとめて覚えるときにも使えます。ただし、長い説明文をそのまま覚える方法ではないので、用語、分類、手順、チェックリストなどに使うのがおすすめです。
五十音順で用語を整理する
用語が多すぎて頭の中でごちゃごちゃする人には、五十音順で整理する方法もあります。たとえばITパスポートなら、あ行に暗号化、アルゴリズム、アジャイル、IoT、か行にクラウド、仮想化、可用性、完全性、さ行にサーバ、サブネット、情報セキュリティ、システム監査、というように分けます。FPなら、あ行に遺産分割、一時所得、医療費控除、か行に基礎控除、給与所得、公的年金、さ行に雑所得、相続税、贈与税というように整理できます。五十音順のよいところは、思い出せないときに「あ行から探す」という頭の中の検索ができることです。意味を理解するための方法というより、覚えた用語を取り出しやすくする方法です。試験前に「どの用語が抜けているか」を確認するのにも使えます。
ストーリー記憶法でバラバラの用語をつなげる
バラバラの用語をそのまま覚えるのが苦手な人には、ストーリー記憶法が向いています。これは、覚えたい用語を短い物語にしてつなげる方法です。たとえばITパスポートなら、「クラウドの上にサーバがあり、ハッカーが侵入しようとした。ファイアウォールが炎の壁で守り、暗号化された鍵でデータベースを閉じた。最後にAIがログを分析して異常を発見した」という話を作ります。この短い話の中に、クラウド、サーバ、ハッカー、ファイアウォール、暗号化、データベース、AI、ログという用語が入ります。FPなら、「会社員の田中さんが老後資金を考え、保険を見直し、投資信託を始め、住宅ローンを確認し、最後に相続対策を考えた」という流れにすれば、ライフプラン、保険、金融資産、住宅ローン、相続をまとめて思い出しやすくなります。物語は自然でなくてもかまいません。むしろ少し変な話の方が印象に残ります。
頭文字記憶法で分類を覚える
頭文字記憶法は、覚えたい言葉の最初の文字だけを取り出して覚える方法です。たとえばFP3級の6分野は、ライフプランニング、リスク管理、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継です。頭文字だけ取ると、ラ、リ、キ、タ、フ、ソになります。このままだと覚えにくいので、自分なりの語呂や短い言葉にします。人に見せるものではないので、多少変でも問題ありません。頭文字記憶法は、試験範囲、分類名、手順、条件、メリットとデメリットの一覧などに向いています。ただし、頭文字だけ覚えても中身を忘れてしまうことがあります。そのため、頭文字で思い出したあとに、必ず内容を説明できるか確認することが大切です。
比較表で似た用語を混同しないようにする
資格勉強では、似た用語がよく出てきます。似た用語は、別々に覚えるより比較して覚える方がわかりやすいです。たとえばITパスポートの情報セキュリティでは、機密性、完全性、可用性という言葉があります。機密性は、見てはいけない人に見せないこと。完全性は、データが正しく保たれていること。可用性は、使いたいときに使えること。このように並べると違いが見えます。簿記なら、資産、負債、純資産、収益、費用を比較します。FPなら、所得税、住民税、相続税、贈与税を比較します。登録販売者なら、成分名、効能、副作用、注意点を並べます。比較表は、きれいに作ることが目的ではありません。違いがわかれば十分です。ノートに手書きでも、スマホのメモでも、スプレッドシートでもかまいません。
逆引き暗記法で試験本番に強くする
普通の暗記では、用語を見て意味を覚えることが多いです。しかし試験では、問題文を読んで答えを選ぶ必要があります。そのため、意味から用語を思い出す練習も必要です。これが逆引き暗記法です。たとえば、「インターネット経由でサービスやデータを利用する仕組み」と見て、クラウドと答える。「外部からの不正アクセスを防ぐ仕組み」と見て、ファイアウォールと答える。「会社や事業のお金の流れを記録すること」と見て、簿記と答える。
「収入から必要経費などを差し引いたもの」と見て、所得と答える。この練習をすると、用語をただ知っている状態から、問題で使える状態に近づきます。暗記カードを作る場合も、表に説明、裏に用語を書く形にすると逆引き練習ができます。
白紙再現法で「わかったつもり」を防ぐ
白紙再現法は、何も見ずに覚えていることを書き出す方法です。たとえばFPの相続を勉強したあと、白紙に「相続税、基礎控除、法定相続人、遺産分割、遺留分、贈与税」など、思い出せる言葉を書き出します。そのあと参考書を見て、抜けていた内容を確認します。ITパスポートなら、セキュリティ用語を何も見ずに書き出します。
簿記なら、勘定科目や仕訳の流れを書き出します。この方法のよいところは、自分が本当に覚えているかがはっきりすることです。参考書を読んでいるときは理解した気になりますが、何も見ずに書こうとすると、意外と思い出せない部分が見つかります。試験前の確認にも使いやすい方法です。
分散復習で忘れる前提の勉強にする
どんな記憶術を使っても、復習しなければ忘れます。だからこそ、資格勉強では「忘れないようにする」より「忘れても戻せるようにする」ことが大切です。おすすめは、今日覚えた内容を翌日、3日後、1週間後、2週間後に軽く見直すことです。
同じ日に何度も詰め込むより、日を空けて何度も思い出す方が記憶に残りやすくなります。復習は長時間でなくても大丈夫です。暗記カードを5分見る、間違えた問題を3問だけ解く、白紙に覚えている用語を書き出す、このくらいでも復習になります。記憶術は覚える入口で、分散復習は覚えた内容を残す仕組みです。この2つを組み合わせると、大人の資格勉強でも続けやすくなります。
資格別に向いている記憶術
資格によって、向いている記憶術は少し違います。FP3級は、制度や数字、分野の整理が大切なので、記憶の部屋、比較表、頭文字記憶法、白紙再現法が使いやすいです。簿記3級は、暗記だけでなく問題を解きながら覚える資格なので、逆引き暗記法、白紙再現法、比較表、問題反復が向いています。ITパスポートは用語が多く抽象的なので、イメージ変換法、五十音順整理、ペグ法、比較表、暗記カードが使いやすいです。
登録販売者は成分名や効能、副作用が多いので、暗記カード、比較表、語呂合わせ、分散復習が向いています。宅建は法律用語や数字、期間が多いので、比較表、語呂合わせ、記憶の部屋、白紙再現法が役立ちます。自分が受ける資格に合わせて、使う記憶術を選ぶと効率が上がります。
記憶術に時間をかけすぎない
記憶術は便利ですが、注意点もあります。それは、記憶術を作ること自体が目的になってしまうことです。きれいな暗記カードを作る、立派なノートを作る、細かすぎる記憶の部屋を作る、語呂合わせを大量に考える。これらに時間をかけすぎると、肝心の問題演習が減ってしまいます。資格試験では、覚えた内容を問題で使えることが大切です。
記憶術は、勉強を助ける道具です。覚える、思い出す、問題を解く、間違える、復習する。この流れを忘れないようにしましょう。記憶術は完璧に使う必要はありません。覚えにくいところだけに使うくらいで十分です。
まず試すならこの3つ
いろいろな記憶術がありますが、最初から全部やる必要はありません。まず試すなら、イメージ変換法、比較表、分散復習の3つがおすすめです。イメージ変換法は、難しい用語を絵に変える方法です。比較表は、似た用語の違いを整理する方法です。分散復習は、覚えた内容を日を空けて見直す方法です。この3つは、FP、簿記、ITパスポート、登録販売者、宅建など、いろいろな資格に使えます。まずは苦手な用語を1つ選び、それをイメージに変えてみましょう。次に、似た用語を2つ並べて違いを書いてみましょう。
そして翌日もう一度見直してみましょう。これだけでも、ただ読むだけの勉強より記憶に残りやすくなります。
まとめ|記憶術は資格勉強を続けやすくする道具
資格勉強で覚えられないのは、記憶力だけの問題ではありません。知識を入れるだけで、思い出す仕組みがないことも原因です。記憶術は、覚えたい内容を取り出しやすくするための工夫です。記憶の部屋で試験範囲を整理する。イメージ変換法で難しい用語を絵にする。ペグ法でリストや順番を覚える。五十音順で用語を探しやすくする。
ストーリー記憶法でバラバラの用語をつなげる。比較表で似た用語を整理する。逆引き暗記法で問題に強くする。白紙再現法で覚えた内容を確認する。そして分散復習で忘れにくくする。すべてを一度にやる必要はありません。自分が覚えにくいところだけに使えば十分です。資格勉強では、忘れることを前提に、何度も思い出す仕組みを作ることが大切です。小さく覚えて、小さく復習して、少しずつ知識を増やしていきましょう。