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(A15)暗記に使えるドローイング効果、覚えられないときの勉強法

 

覚えたいことは「描く」と記憶に残りやすい?暗記に使えるドローイング効果

資格勉強や暗記をしていると、「何度も書いているのに覚えられない」「読んだつもりなのに思い出せない」と感じることがあります。そんなときに使える方法のひとつが、覚えたい内容を簡単な絵にして描くことです。

この方法は、心理学の研究で「ドローイング効果」と呼ばれています。ドローイング効果とは、覚えたい言葉や内容をただ書き写すよりも、自分で絵にして描いたほうが、あとで思い出しやすくなるという記憶の現象です。

ドローイング効果とは何か

Wammes、Meade、Fernandes らの研究では、参加者に単語を覚えてもらうとき、「単語を書く」場合と「単語を絵に描く」場合を比べました。その結果、絵に描いた単語のほうが、あとで思い出されやすいことが示されました。さらに、この効果は1回だけの偶然ではなく、複数の実験で確認されています。

ポイントは、絵が上手である必要はないことです。覚えるための絵なので、きれいなイラストを描く必要はありません。自分が見て意味を思い出せる程度の、簡単な図や落書きで十分です。

引用元「「The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall」は、Wammes, Meade, Fernandes の2016年論文として掲載されています。2018年の Fernandes らの論文は「The Surprisingly Powerful Influence of Drawing on Memory」という総説で、この「描くと覚えやすい」効果を整理した内容です。」

なぜ描くと記憶に残りやすいのか

描くことが記憶に役立つ理由は、情報をいくつもの形で処理できるからだと考えられています。文字を読むだけなら、主に言葉として処理します。しかし、絵に描こうとすると、「これは何を表しているのか」「どんな形にすればよいか」「どの部分が大事か」と考えます。

つまり、描く作業には、意味を考える、形をイメージする、手を動かす、完成した図を見る、という複数の処理が含まれます。研究でも、描くことは意味、視覚、運動の要素を組み合わせて記憶を作るため、記憶に残りやすくなると説明されています。



書き写すだけの勉強が弱い理由

暗記でよくある失敗は、教科書やノートをそのまま書き写して満足してしまうことです。もちろん、書くこと自体が無意味なわけではありません。しかし、ただ写すだけだと、頭の中で深く考えないまま手だけが動いている状態になりやすいです。

一方で、絵にするためには、内容をいったん自分の頭で変換する必要があります。たとえば「需要と供給」を覚えるなら、文字を何度も書くより、価格が上がると需要が下がる簡単なグラフを描くほうが、内容を思い出しやすくなる場合があります。

資格勉強で使うなら「きれいな絵」より「思い出すための図」

ドローイング効果を勉強に使うときは、イラストのうまさを目指さないことが大切です。目的は絵を完成させることではなく、覚えたい内容を思い出しやすくすることです。

たとえば、法律用語なら「人」「契約書」「お金」「期限」などを簡単な記号で描きます。IT用語なら「サーバー」「利用者」「データの流れ」を矢印でつなぎます。英単語なら、単語の意味を小さなイラストにします。歴史なら、人物、出来事、年代を簡単な関係図にします。

このように、絵というより「記憶のフック」を作る感覚で使うと、勉強に取り入れやすくなります。

抽象的な言葉はどう描けばよいか

「努力」「信用」「リスク」「権利」「義務」のような抽象的な言葉は、そのままでは描きにくいです。その場合は、具体例に置き換えて描くと使いやすくなります。

たとえば「リスク」なら、崖の前で足元を確認している人を描く。「信用」なら、握手している人を描く。「義務」なら、提出期限のある書類を描く。このように、抽象語を場面に変換すると、記憶に残る形にしやすくなります。

暗記に使う具体的な手順

  1. 覚えたい用語を1つ選ぶ
  2. その意味を一言で説明する
  3. その説明を簡単な絵や図にする
  4. 絵を見ながら、元の用語と意味を口に出す
  5. 翌日、絵だけを見て内容を思い出す

この方法の良いところは、短時間でも使えることです。研究紹介では、描く時間が短い場合でも記憶の効果が見られたことが紹介されています。長い時間をかけて丁寧に描くより、短くても自分で考えて描くことが大切です。

すべてを絵にする必要はない

ただし、勉強内容を全部イラスト化しようとすると時間がかかりすぎます。ドローイング効果は便利ですが、万能ではありません。特に、数字の丸暗記、条文の正確な文言、計算手順などは、絵だけでは不十分な場合があります。

おすすめは、覚えにくい用語、混同しやすい概念、文章だけではイメージしにくい内容に絞って使うことです。通常の暗記、問題演習、音読、復習と組み合わせることで、より実用的になります。

大人の勉強にも向いている理由

社会人や40代以降の勉強では、若い頃のように力まかせの丸暗記がしんどく感じることがあります。だからこそ、ただ繰り返すだけでなく、覚え方を工夫することが大切です。

描く暗記法は、特別な道具がいりません。紙とペンがあればできます。きれいに描く必要もありません。むしろ、少し変な絵や自分だけがわかる図のほうが、記憶のきっかけになることもあります。

まとめ

ドローイング効果の研究からわかるのは、記憶は「ただ見る」「ただ書く」よりも、自分で意味を考えて形にしたほうが残りやすいということです。覚えたい内容を絵にすることで、言葉、意味、イメージ、手の動きが組み合わさり、思い出すための手がかりが増えます。

資格勉強で覚えられない用語があるときは、何度も書き写す前に、一度だけ簡単な絵や図にしてみるのもおすすめです。上手な絵である必要はありません。大切なのは、自分の頭で考えて、自分が思い出せる形に変えることです。暗記が苦手な人ほど、「描いて覚える」という方法を試す価値があります。

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